会社経営豆知識 |
精神疾患(うつ病)の場合の労災申請について |
質問内容 |
50人程度の規模の会社の経営者です。 最近、仕事も増え順調な経営と思われていた矢先、長時間勤務のせいなのか従業員の一人が、うつ病(精神疾患)になりました。 職場においてうつ病にさせるほどのプレッシャーをかけたわけでもなく、彼だけがそのような診断を受けてしまいました。 職場の問題とも思えないのですが労働災害として申請しなければならないのですか。 労災認定は、会社の評判にかかわるので避けたいのですが、何かいい方法はないでしょうか。 そもそも労災あたるのでしょうか。 |
回答 |
○労災の申請を躊躇われている様ですが ・労災保険を利用したからといって、必ず保険料があがるわけではありません。 ・労働基準監督署が来ることを恐れているかもしれませんが、よほどの事故でない限り必ず来るわけではありません。 ・「労災隠し」(会社側が労災申請を拒否し隠ぺいすることなど)をした場合の方が社会的な批判は大きいです。 ・健康保険の自己負担ではもったいないです。 申請が面倒などで躊躇う場合もあるかとは思いますが、正しく申請を行えば、医療費0の労災の給付が受けられます。労災の申請を躊躇う必要はありません。 ○労災にあたるかどうかの検討 次に、労災にあたるとの判断に至った場合、労災認定をしなければならないとお考えください。精神疾患(うつ病など)の場合でも同様です。 いわゆる「労災隠し」(会社側が労災申請を拒否し隠ぺいすることなど)は犯罪です。 うつ病になった従業員の家族にも多大な負担をかけることになります。労災と判断した場合は必ず適切な行動を行ってください。 ○労災認定基準 現状として1998年時点では精神障害による労災申請件数が42件でしたが、2010年では1181件となっており、精神障害が労災認定されることが多くなっています。労災を申請しても、決定まで半年以上の年月を要することが平均的で従業員が苦しい思いをしなければならないことが多々あります。 ここで、精神疾患とは 統合失調症、うつ病、躁うつ病、強迫性障害、パニック障害、適応障害などをいいます。 つまり、うつ病は精神疾患の一つです。 近年、精神疾患に関する労災の認定基準が新しくなりました。 1対象疾病を発病していること 2発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること 3業務以外の要因、及び個人的な要因が理由で発病したと認められないこと 労災申請を悩む部分になるのは2です。 ここで「特別な出来事」とされる場合「強」と評価され、労災認定されると思われます。 ・心理的負荷が極度 例えば強姦、セクハラ、業務に関連し、他人を死亡させたなど心理的負荷が大きいと考えられるものです。 具体的事例に当たらない場合でも、上記に準ずると考えられれば「強」という判断になります。 ・極度の時間外労働時間 発病前1か月におおむね160時間 発病前2か月におおむね1か月あたり120時間 発病前3か月におおむね1か月あたり100時間 また、評価が複数組み合わさる場合についても労災として申請しなければならなくなります。 「中」+「中」=「中」又は「強」 などと評価されます。 上述の基準に明らかにあてはまる場合であれば、労災認定すべきです。 もっとも現実には、悩ましい状況も考えられると思います。 たとえば、時間外労働時間が160時間であったとしても、労働密度が低い場合などは労災認定されない可能性もあります。 ○経営者として、従業員がうつ病になるリスクを考える ・社内の雰囲気が悪くなる。 特別な配慮をすればなぜうつ病について理解のある人でさえ、あの人は働かなくていいという内心の不満が生まれます。 ・うつ病が会社の業務に起因するのであれば労災となることは前述の通りです。もし、うつ病者が自殺をすれば会社の安全配慮義務も問われかねません。自殺者が出た場合、新聞沙汰にもなりえますから、会社の信用に関わります。 ○あなたの会社を守る 会社のリスクを、日常的に防止することや、発症した場合の早期対策は必要です。 従業員は宝でありますが、会社を守るという視点から「解雇」についてのプロセスを予め用意することをおすすめします。 ここで大切なのは就業規則です。 ○まず、労災にあたるかどうかを判断してください。 上記の基準をみて判断に迷う場合などは専門家に相談するのがよいでしょう。労災隠しは犯罪ということを肝に銘じておいてください。 ○また、今後、会社のリスクを見据え、就業規則を作成することや、うつ病者を出さないためのメンタルケアをするなど人事労務管理をすることが大切になってきます。 リスクに備えた対策を行いたい場合、その分野に強い先生方に相談するのがよいでしょう。 |
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