会社経営豆知識  
 

社会保険に加入する必要性と条件について

質問内容
今まで役員のみで会社を運営していた経営者です。
最近、業務多忙により、フルタイムの従業員の雇用を考えております。
社会保険に加入する必要性と条件を教えていただけますでしょうか。

回答
今回の質問で問題となる社会保険とは
下記の4つであるということを前提にお話しさせていただきます。
 ・労災保険
 ・雇用保険
 ・健康保険
 ・厚生年金保険


国民健康保険は従業員が加入するものではないので説明は割愛します。
その他の保険については、下記における【条件】を満たす労働者がいる場合、
会社は社会保険に加入しなければならないとお考えください。


・労災保険

 【条件】労働者(全て)
 【必要性】労働者の業務上の災害について当然に使用者は一定額の補償をしなければなりません。

 しかしその金額が大きくなれば当然事業に影響が出ることになります。
 そのため、労災保険は労働者の保護が目的ですが、事業におけるリスク回避ともなります。
 
 例外としまして、農業、水産業、林業の個人経営者の場合、
 労災保険の適用が強制の場合と任意の場合がありますのでご注意ください。
 
 また、今まで経営者という立場であった場合労災保険に加入していないのではないかと思われますが、
 中小企業の代表以外の役員には特別加入という制度もありますので、検討される場合は専門家へのご相談をお勧めします。
 
 
・雇用保険

 【条件】31日以上働くことが見込まれ、週に20時間を超えて働く人で原則65歳に達する日前に雇用される者
 【必要性】労働者の保護のためです。

 フルタイムの従業員を雇用するということであれば、加入になるのが原則とお考えください。
 もっとも、短期雇用や高齢者雇用の場合、加入条件が異なるなど扱いが違うため、
 そのような場合は法改正もあるため専門家に問い合わせることをおすすめします。
 また、個人経営の農業、水産業、林業では雇用保険の適用が強制の場合と任意の場合がありますのでご注意ください。


・健康保険・厚生年金保険

 【条件】法人に雇用されるフルタイム従業員
 【必要性】労働者の老後の年金のためです。

 健康保険と厚生年金保険の加入条件は同一であり、どちらか片方だけ加入するということは基本的にありません。
 ただし、70歳以上の方は原則として厚生年金を脱退し、健康保険のみに加入することになります。
 また、支店や工場など会社の規模が大きくなる場合適用事業所の一括などの制度もあります。


社会保険は勤務実態によって、ここに記載しきれない細かい適用条件があります。
一度専門家にご相談いただき、状況に応じた判断を求めるのが一番かと思います。


・ペナルティー
以下、参考までに社会保険関連の適応事業者で加入しなかった場合の罰則やリスクを説明します。

・労災保険
 労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度があります。
 事業主が労災保険の加入手続を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料を徴収する他に、
 労災保険から給付を受けた金額の100%又は40%を事業主から徴収することになります。
 
・雇用保険
 雇用保険法第83条 6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金
 
・健康保険
 健康保険法第208条 6箇月以下の懲役又は50万円以下の罰金
 
・厚生年金保険
 厚生年金保険法第102条 6箇月以下の懲役又は50万円以下の罰金
 
 
インターネットで罰則について検索すると、ばれなければ大丈夫との助言が目立ちますが、
本当なのでしょうか?答えはNOです。

法律上罰則が加えられるというリスク以外にに、社会保険に加入しないリスクがあります。
その一例が労働者からの損害賠償請求です。

例えば労働者が病気等により休業した際、社会保険に加入していれば傷病手当金が支給されます。
傷病手当金とは、病気等で仕事に就けなくなった時に、1年半の間、概ね報酬の3分の2が支給される制度です。

社会保険に加入していないのは会社の責任となるため、 会社は傷病手当金に相当する金額を自腹で補償する必要があるでしょう。
そうでなければ従業員に損害賠償を請求されてしまう可能性があります。

遺族厚生年金の場合も同様でその名の通り年金です。
金額が傷病手当金よりも大きくなることは想像出来るはずです。
それを自腹で払い続けることはかなりの負担です。

年金事務所は社会保険に関する事務が適正に行われているか確認する為、定期的に企業に調査を行います。
ここで未加入が判明すれば、該当者全員分、2年間遡って保険料の支払いを命じられます。
社会保険料は労使折半とはいえ、2年分の社会保険料の半額を従業員から徴収するのは難しいでしょう。

こういった社会保険に加入していないことによるリスクも認識しておく必要があるでしょう。